前の話になる「アルバム」はこちら。
今日は学園揃ってのお祝いの日。 学園は、ひっくり返したようにメチャクチャ。 一年に一度の、イエス様のご降臨を祝うその日は、卒業生達のホームカミングデー状態に陥る。構内を卒業生が歩いていても、いぶかしむ人なんか一人もいない。 大多数は礼拝堂に向かう中、僕は一人、とある建物の四階に登っていた。 「関係者以外、立ち入り禁止」の張り紙を抜けて。 建物の、どこの鍵が閉まっていて、どこの鍵が開いているか。 どのルートを通れば誰にも遭遇せずに目的の部屋までいけるか。 …僕は、その事に関してはクリアにシミュレーションできる。 10年前とかわらないのであれば、保安の人がどの順番で鍵をかけるのかまで覚えている。 しかし、最近の人事異動に気を配るのを忘れていた。 四階まで登った僕は、地下一階まで逆戻りをするハメに。 もちろん、誰にも会わずに。 地下一階。 「お祝い」から切り離されたかのような、静かな部屋に、先生はいた。 ドアを乱暴にがちゃがちゃすると、先生が飛んできた。 そして僕を見ると面食らった。 「僕のこと、覚えていますか」 「もちろんです。お久しぶりですねぇ。そしてよく、ここが分かりましたねぇ…まぁ貴方なら不思議ではありませんが…」 やっぱりだ。 この先生だけは変わらない。 1年後に訪れようが、5年後に訪れようが、10年後に訪れようが、「昨日も来ましたねぇ」位の感覚で出迎えてくれる。 「先生、変わらないですね」 「いやぁ、僕も大分とかわったなと思いますよ」 確かに目の周りにしわが増えた気がするけど、「かわったなぁ」という印象は受けない。 「先生にご覧にいれたいものがあります」 「…なんでしょう?」 「…想像つきますか?」 (沈黙) 「ま、全く…」 …どうやら忘れ去られていたようだ。 僕だって、こないだ思い出したのだから無理はない。 「と、いうことで、いつお持ちすればいいか、等ご連絡をいただければと思います」 とメモを書こうとしたとき。 「まぁ、まぁ、どうぞ…」 先生は椅子を持ってきた。 その時に思い出した。 この先生だけは、いかに理解不能な状態で自分に来客者が訪れても、「まぁ、まぁ、どうぞ…」と椅子を勧めるのだ。 10年前だってそうだった。 そして、それが自然に出来るのは、この先生だけだった。 あぁ、やっぱりかわらない。 礼拝前だったので、少し近況を報告して、先生の近況も少し伺い、連絡先を書いていたら 「礼拝時間だよ~~!!!」と呼びにきたほかの先生のアナウンスで、その場を辞した。 (ちなみにその先生、僕が「その場所」にいたことにかなりビビっていた) とりあえず、タスク完了。 あとは、先生からの連絡待ち。 先生は、アルバムを見たときどんな感想を持つのだろうか。 今から、その瞬間が楽しみだ。
by kaede-cogito
| 2006-12-17 14:39
| 戯言
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