人気ブログランキング | 話題のタグを見る

アルバム (2)

前の話になる「アルバム」はこちら。

今日は学園揃ってのお祝いの日。
学園は、ひっくり返したようにメチャクチャ。

一年に一度の、イエス様のご降臨を祝うその日は、卒業生達のホームカミングデー状態に陥る。構内を卒業生が歩いていても、いぶかしむ人なんか一人もいない。

大多数は礼拝堂に向かう中、僕は一人、とある建物の四階に登っていた。
「関係者以外、立ち入り禁止」の張り紙を抜けて。

建物の、どこの鍵が閉まっていて、どこの鍵が開いているか。
どのルートを通れば誰にも遭遇せずに目的の部屋までいけるか。
…僕は、その事に関してはクリアにシミュレーションできる。
10年前とかわらないのであれば、保安の人がどの順番で鍵をかけるのかまで覚えている。

しかし、最近の人事異動に気を配るのを忘れていた。

四階まで登った僕は、地下一階まで逆戻りをするハメに。
もちろん、誰にも会わずに。

地下一階。
「お祝い」から切り離されたかのような、静かな部屋に、先生はいた。

ドアを乱暴にがちゃがちゃすると、先生が飛んできた。
そして僕を見ると面食らった。

「僕のこと、覚えていますか」
「もちろんです。お久しぶりですねぇ。そしてよく、ここが分かりましたねぇ…まぁ貴方なら不思議ではありませんが…」

やっぱりだ。
この先生だけは変わらない。
1年後に訪れようが、5年後に訪れようが、10年後に訪れようが、「昨日も来ましたねぇ」位の感覚で出迎えてくれる。

「先生、変わらないですね」
「いやぁ、僕も大分とかわったなと思いますよ」
確かに目の周りにしわが増えた気がするけど、「かわったなぁ」という印象は受けない。

「先生にご覧にいれたいものがあります」
「…なんでしょう?」
「…想像つきますか?」
(沈黙)
「ま、全く…」

どうやら忘れ去られていたようだ。
僕だって、こないだ思い出したのだから無理はない。

「と、いうことで、いつお持ちすればいいか、等ご連絡をいただければと思います」
とメモを書こうとしたとき。

「まぁ、まぁ、どうぞ…」

先生は椅子を持ってきた。

その時に思い出した。
この先生だけは、いかに理解不能な状態で自分に来客者が訪れても、「まぁ、まぁ、どうぞ…」と椅子を勧めるのだ。
10年前だってそうだった。
そして、それが自然に出来るのは、この先生だけだった。

あぁ、やっぱりかわらない。

礼拝前だったので、少し近況を報告して、先生の近況も少し伺い、連絡先を書いていたら
「礼拝時間だよ~~!!!」と呼びにきたほかの先生のアナウンスで、その場を辞した。
(ちなみにその先生、僕が「その場所」にいたことにかなりビビっていた)

とりあえず、タスク完了。
あとは、先生からの連絡待ち。

先生は、アルバムを見たときどんな感想を持つのだろうか。
今から、その瞬間が楽しみだ。
by kaede-cogito | 2006-12-17 14:39 | 戯言
<< I did it perfec... ノロウィルス? >>