あの日から、僕の心に募る償いの祈りの言葉は、あいつには届かないはずだ。
赤いロゴが目立つ高層ビルを見るたびに、募る心苦しさは、あいつは知らない。 常日頃吐き出される祈りの言葉は、小さくかすかなものでも、確かに存在感があった。 そしてまた、巻き込まれた彼も、祈りの言葉を口にしたのだろう。 僕には、支えてくれる沢山の人がいる。 辛いときに「がんばれ」と言ってくれる友達がいる。 僕に与えられた幸せを思うたびに。 僕を救ってくださる周りの方々のお世話になるたびに。 僕だけ、いいのかと。 そのありがたさを、僕だけ甘受するその理不尽さ、罪深さに足がすくんだ。 僕のせいで、散々痛めつけられた。 僕のせいで、苦しみを味わった。 あいつは、どうなる? 今日、吉報がもたらされた。 ささえてくれる人を、得る事が出来たらしい。 一抹の悲しみがない、といえばうそになる。 しかし何だ、この安堵感は。 よかった。 本当に良かった。 支えてくれる人が、できた。 これできっと、あいつも幸せになる。 Riddance. こんな言い方をしたら、非常に失礼だな。 しかし、一番初めに浮かんだのは、その言葉だった。 全てが、違う方向でもって、それでも同じベクトルで進んでいく。 僕たちが自由に操れるのはX, Y, Zの三軸だけ。 四軸目の「時間」は、神の領域。 三次元しか操る事のできない、僕らが今するべき事は。 さぁ、今を精一杯生きよう。力の限りに。 あいつは僕に、「生きる」事を遺した。そして「言葉」を持っていった。 あいつが言葉を持っていったのは、僕が真実を語らなかったせいだ。 今なら、できる。 言葉に、真実を。 時間に、生命を。 目の前の世界が、急に音を立てて動き出した。 時間軸が、今はっきりと目の前に姿を現す。 前に進め。それこそが、お前に与えられた道。 神の思し召しなら、御意に従うまで。
by kaede-cogito
| 2005-08-15 01:34
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